【障がい者施設の整備・改修】工事費用や補助金とは?

今回は、【障がい者施設の整備・改修】工事費用や補助金をご紹介します。

【現役】設計の請負業者
【現役】設計の請負業者
この記事では、「障がい者施設の改修や整備工事の検討が必要な建物の症状」「利用できる行政の補助金」「改修工事の依頼から完了までの流れ」について解説していきます。

 

 

施設改修を検討すべき症状とは?

障がい者施設における施設内の外観や室内などの改修や整備工事は、以下の3つの症状がある場合に検討してみてください。

  • 空調設備や正常に稼働していない
  • 食堂が解放的になっており、利用者の特徴に合わせた対応が取りづらい構造になっている
  • 建物が老朽化している

 

【症状1】空調設備や正常に稼働していない

空調設備が正常に稼働していない場合、できるだけ早く改修や整備工事(改造工事)を行う必要があります。

空調設備は、換気や室内の空気の清浄化など体調面を維持するうえで欠かせない役割を担っているため、こういった症状を放置したままでいると入居者の健康に悪影響を及ぼす恐れがあるためです。

利用者(入居者)の方の中には、抵抗力が弱く体温調整が苦手な方もいるため、速やかに工事を実施することを検討するようにしてください。

【症状2】利用者の特徴に合わせた対応が取りづらい構造

施設内に完備している食堂が開放的な造りになっている場合、食事環境を整えるための工事を検討することをおすすめします。

施設の利用者の中には、食事に関して強いこだわりを持つ方がおり、開放的な造りになっていることでご飯を食べるのがままならなくなってしまう場合があるためです。

このため、例えば個室ブースを造ったり、間切りをするための設備を設置するなどを検討してみてください。

そうすることで、サポートをしやすくなるうえに、それぞれの利用者に合わせた食事環境を提供することが出来ます。

【症状3】建物が老朽化している

障がい者施設の建物自体が老朽化や劣化している場合、できるだけ早く改修工事を行う必要があります。壁にヒビが入っていたり、床の傾斜やきしみなどの症状がある場合です。

こういった症状がある場合、建物自体の耐久性が弱くなっている可能性が高いため、放置したままでいると建物の倒壊やコンクリート片の落下を招く恐れがあります。

このため、建物が老朽化していると感じた際は、できるだけ早く専門家に見てもらい、改修や建て替え工事などを検討するようにしてください。

 

 

施設改修の大まかな流れとは?

障がい者施設における設備や建物自体の改修(整備など)を行う場合、主に以下の流れで工事を行います。

  • 改修工事の業者を選定・契約する
  • 契約した業者による施設の状況確認
  • 改修工事の計画や設計後に、予算や見積もりの確認を行う
  • 改修工事の開始から完了

ただし、必ずしも上記の流れで工事が進むとは限りません。業者によっては、現場調査を行う前に施設の図面を見て大まかな見積もりを出すケースもあるためです。

このため、障がい者施設の改修や整備工事を行う際は、どのような流れで進めていくのか、まず工事業者に確認を行うようにしてください。

①改修工事の業者を選定・契約する

障がい者施設に限らずですが、改修や整備工事を行う際は、「依頼する工事業者の選定を行い、工事請負書などの書面を交わして契約を締結」します。

この改修工事を依頼する業者を選定する際は、「障がい者施設の改修工事を得意としている業者」と契約を締結するのがおすすめです。

こういった業者に依頼することで、利用者のニーズや機能性を考慮した建築計画を立ててくれることを期待出来ます。

②契約した業者による施設の状況確認

工事業者の選定や契約締結後は、業者による障がい者施設の状況確認です。

この状況確認を現場調査と言い、建物や設備がどの程度劣化しているのか、どのような不具合や症状が生じているのかなどの調査が実施されます。

なお、足場を組んで工事を行う必要がある場合は、設置が難しい場所はないか、機材を公道に設置する必要があるのかも含めた調査が必要です。

仮に公道に足場を組む必要がある場合は、行政に許可を取る手続きをとらなければいけません。基本的には業者が手続きを行なってくれますが、依頼した企業によっては依頼者に任せるケースもあるようなので、事前に確認しておくようにしてください。

③改修工事の計画や設計後に、予算や見積もりの確認を行う

現場調査で調査した内容をもとに、改修工事の計画や設計、見積もりの確認を行います。

障がい者施設の利用状況や建物の老朽化の程度、施設側の意見や要望、希望予算などを踏まえて、双方の意見を擦り合わせながら改修工事の計画を立てる流れです。

④改修工事の開始から完了

ここまでの一連の流れを踏んだ後、工事の施工実施や竣工、予定日の引き渡しが行われ、障がい者施設の改修工事は完了となります。

ただし、大規模な改修工事を行う場合、当初の予定日に引き渡しが行われないケースも少なくありません。

特に施設の運営と改修工事を並行して行う場合、利用者や建物の安全性を確保しながら工事を行う必要があるため、状況によっては予定していた日数よりも竣工日が大幅に伸びる可能性があります。

このため、大規模な改修工事を行う際は、竣工日が延長させる可能性があることを考慮しながら対応するようにしてください。

 

 

施設改修にかかる費用とは?

障がい者施設の改修工事を行う場合、依頼した業者や改修・整備する箇所によってかかる費用が異なります。目安となる価格を知ることは重要なので、ここでは一例を紹介します。

生活介護事業(定員80名)や施設入所支援事業(定員3名)の障がい者施設の空調設備の改修工事(改修工事計画及び改修工事)を行なったケースです。

このケースでは、施設全体の空調設備が老朽化していたため、機器の入れ替え工事を実施し、約2,400万円の工事費用が発生していました。しかし、この工事では「一般社団法人 環境共創イニシアチブ」という企業が提供している「建築物節電改修支援事業費補助金」を活用して500万円の補助金を受けたため、施設側が実質的に負担した費用は約1,900万円だったそうです。

なお、この事例は平成21年ごろに実施された改修工事となっているため、必ずしも上記で解説した補助金を利用できるとか限りません。このため、企業が提供している補助金の利用を検討されている方は、事前に会社に確認を行うようにしてください。

 

補助金を使って改修できる?

障がい者施設の改修工事を行う際は、行政機関が設けている補助金制度を利用できるケースがあります。

例えば、大規模な改修工事を行う場合です。空調設備やユニット化などの大規模な整備工事を行う場合、厚生労働省が設けている補助金を利用して整備費(工事費用)の1/2を補助してもらうことが出来ます。

ただし、上記で紹介した補助金は、全ての障がい者施設でこの制度を利用できるとは限りません。補助金の対象となっている工事内容の中には、補助の対象としている施設を限定しているものもあるためです。

このため、補助金を利用して改修工事を行いたいと考えている方は、事前に経営する施設が属する自治体などに確認を行うようにしてください。

施設整備の際に利用できる補助金

障がい者施設の整備を行う場合、厚生労働省が設けている補助金制度を利用することが可能です。

具体的には、「障がい者総合支援法第5条に基づく障害福祉サービス事業所などに該当している障がい者施設」の整備工事を行う際に、厚生労働省が設けている補助金制度を利用することが出来ます。

なお、厚生労働省が設けている補助金を利用した場合、原則「国から整備工事にかかった費用の1/2」を補助してもらうことができ、「都道府県から1/4」にあたる金額の補助金を支払ってもらうことが可能です。

また、民間の事業者が運営する障がい者施設では、施設の整備に伴う必要なお金の融資を受けることも出来ます。

大規模な改修工事を行う際に利用できる補助金

障がい者施設における電気やガスなどの設備の取り替えや利用者(入居者)のニーズに合わせた大規模な改修工事を行う際は、施設整備と同様に厚生労働省が設けている補助金を利用することが可能です。

具体的には、厚生労働省が定めている「施設の一部改修」や「施設の冷暖房設備の設置」など、対象となる事業の大規模な改修工事を行なった際に、それぞれの工事内容に応じて算出された補助金を受給することが出来ます。

ただし、厚生労働省が定める全ての障がい者施設に、この制度が適応されるとは限りません。

例えば、厚生労働省が定める障がい者施設の「施設の冷暖房設備の設置」の改修工事を行なった場合、その障がい者施設が「入所施設」または「無料低額宿泊所」であることが条件となっているためです。

このため、厚生労働省が設けている助成金を利用する場合は、事前に「自身が経営する障がい者施設における改修工事内容が対象となっているのか」などを確認するようにしてください。

 

 

【現役建築士】からのアドバイス

障がい者施設は、それぞれの利用者(入居者)の個性や、安全性・機能性などを考慮して施設の改修や整備工事(建て替え)を検討することが重要になります。

利用者によって、食事や活動中などに感じる不安要素やこだわるポイントが異なり、例えば食堂が開放的になっていることで食事自体がままならなくなってしまう方もいるためです。

しかも、障がい者施設の利用者の中には、突発的に何らかの行動を起こす方もいるためため、入居者に合った構造に変えることで不足の事態に備えた対応を取りやすくなるといったメリットもあります。

このため、障がい者施設の改修や整備工事を実施するか悩んでいる方は、それぞれの入居者の個性を考慮して、施設の安全性や機能性を高めることを検討してみてください。

 

 

 

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