【介護施設の経営は儲かるのか?】適正運営のポイント3選

今回は、【介護施設の経営は儲かるのか?】適正運営のポイント3選をご紹介します。

【現役】医療介護の営業マン
【現役】医療介護の営業マン
こんにちは、私は福祉用具専門相談員として営業をしております。高齢者の増加は著しく、需要に対して施設の供給が追い付かない状況です。

今回は、有料老人ホームを例に挙げ「介護施設の経営は儲かるのか?」について考えてみましょう。

 

 

介護施設の経営は儲かるのか?

「介護施設の経営は堅実に運営できていれば、相応に利益を上げることができる事業」と言えます。

しかし、条件があります。それは「施設を適正に運営する」ということです。適正に運営ができていれば、それなりに利益を上げることは可能です。

 

 

介護施設の経営で儲かるメソッド3選とは?

①地域の状況を入念にチェック

介護施設の経営を検討するに当たっては、周辺の介護施設の現状についてリサーチすることが必要です。競合が多いと、それだけ入居を促進する上でのネックになり得ます。

②収益構造を十分に理解し、適切な料金設定を

介護施設の収益構造は十分理解しなければなりません。間違っても「満床に近い稼働を維持しているのに、利益が一向に上がらない」というようなことにならないようにしましょう。

以下、主たる収支項目を列挙するので、参考にしていただければ幸いです。

収入 家賃
管理費
介護サービス費
上乗せ介護費
食費・その他サービス
支出 人件費
施設維持管理費
食事・その他サービス関係費
広告費・事務費用
建設借入利息
固定資産税等
減価償却 建物・設備関係償却
開業費関係償却

③「人材」を確保し続ける仕組みづくり

人材の確保なくして絶対に成り立ちません。何が何でも人材を集めてこなければなりません。

事前に潤沢なスタッフを確保できるケースは、それほど多くありません。スタッフを確保するメドが全くないうちは、介護施設経営に手を出すべきではありません。

必要な人材を安定的に確保するためには、人材教育するための仕組み作りも必要です。介護や看護職といった専門職の方は「自らを成長させることのできる法人に属したい」と考える傾向が強いです。

スタッフを大事にしない会社、成長させてくれない会社は、敬遠されがちになります。

介護事業会社にはスタッフの研修機会を確保する義務がありますので、会社をあげて人材教育を推進していかなくてはなりません。新規で介護事業分野に参入される法人であれば、コンサルタント等の力を借りることも手段のひとつです。

 

 

介護施設の主要収入源となる「介護報酬」とは?

介護施設の主要な収入源となる「介護報酬」は、国が定めた公定価格です。国が定めた報酬額は、事業者が適正に運営ができるように設計されています。

超高齢社会で供給が圧倒的不足している環境では、介護サービスを担ってくれる事業所がいないと困るわけです。サービス供給の安定化を図るには、国は民間事業者にも門戸を開いていかないと成り立たないのです。

しかし、介護保険ビジネスの場合「大儲け」ができるか否かと言えば、正直難しいのが実情です。その理由について、4つ挙げてみたいと思います。

 

 

介護施設の経営が大儲けできない理由とは?

①介護報酬の財源が国から出ているから

介護報酬は主に「公費」と「国民からの保険料」で成り立っています。貴重な税金と保険料で運営するわけですから、国として事業者には適正に運営してもらわないと困るのです。

悪徳な事業者が業界にはびこるようでは、高齢者は安心して暮らしていくことはできません。事業者はコンプライアンス経営を厳格に行わなければならないのです。

過度に儲けようとするあまり、運営基準を逸脱するような事業所も存在します。例えば、基準よりも少ない人員配置をしたり、スタッフがいないのに「いたことにして」運営したりするケースです。

都道府県や市区町村が介護事業所の指定をするにあたり、厚生労働省令に基づく基準を遵守することを開設者(事業者)に宣誓させることを義務付けています。

介護事業は、基準に基づく運営が求められることから、過度な利益を上げるのが困難な事業であるといえます。

②人材確保が安定しないから

介護施設を運営する中で最も大きな課題は、施設で働く人材の確保です。適正な人材が配置できなければ、施設を運営することができません。

厚生労働省令が定める人員基準は、サービスごとに示されていますが、これはサービス事業を運営するための「最低限の基準」であると言われています。

介護施設の場合、建物の構造や導線等、施設によって事情が異なります。また、入居者の要介護度によっても当然ながら変わってきます。

定員が40名の施設を例に挙げてみますと、極端ですが「要支援者が40名」の場合と「要介護5の方が40名いる」場合とでは、定員が同数であっても介助の量は異なります。認知症の程度や、医療行為の有無によっても変わってくるでしょう。

人員基準で定められた数以上に、スタッフを配置する必要が生じる場合があるのです。職員の確保が難しい介護業界で、技術や経験に長けたスタッフを確保するとなると、難易度はさらに上がります。

離職率が高くなれば、それだけ採用コストもかかり、利益を圧迫します。十分な人材を安定的に確保できないと、介護施設で利益を上げるどころか、運営の継続すらできなくなるのです。

 

 

③制度変更のリスクがつきまとうから

介護報酬の改定は3年ごと、介護保険法は5年ごとに改正されます。

介護報酬の改定は、改定の前年までに行われる「介護事業経営実態調査」の結果に基づき、介護給付費分科会にて審議され、最終的に決定します。

ニュースでも報じられているとおり、社会保障費の増大は止まりません。このままでは制度の持続性が危ぶまれるのではないか、とまで言われております。

さて、介護施設を運営する事業者にとっては、3年ごとに行われる報酬改定が、経営に直接影響を及ぼす点です。「改定は3年に一度のお祭り」と自嘲気味に語る事業主もいらっしゃいます。

介護報酬はプラス改定となるとは限らず、サービス事業によってはマイナス改定となるケースもあります。基本報酬が下がれば、向こう3年間は報酬額が固定されます。

改定前と同じ内容のサービスを提供していても、売上が下がってしまう場合があるのです。公定価格である介護報酬は、事業所レベルで勝手に変更することはできません。

介護保険事業は、こうした「制度変更リスク」があることを、重々理解した上で行わなくてはなりません。

④施設運営は投資額が大きく、転用しにくいから

介護施設は在宅サービスと異なり、多額の投資を必要とします。入居される方の生活に必要な設備やサービスを、最低限用意するだけでも資金力が問われます。

施設運営に必要な設備や物品、サービス等の計画を綿密に立てて、収益構造をしっかり理解した上で進めないと、大変なことになってしまいます。

一方で、介護施設は一般の賃貸集合住宅よりも、高い収益や利回りが見込めると言われています。

通常の賃貸住宅であれば、交通アクセスが悪いと敬遠されがちですが、介護施設では一般賃貸住宅ほどは重要視されず、施設におけるサービス内容や費用面が優先される傾向があります。

反面、介護施設から仕様変更しようとすると、非常に大きな困難が伴います。転用しにくいという点にも注意が必要です。

次回は、「介護施設の経営に成功するには?」について取り上げたいと思います。

 

 

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