【介護施設の開業・開設】必要な手続きや流れとは?

今回は、【介護施設の開業・開設】必要な手続きや流れをご紹介します。

【現役】医療介護の営業マン
【現役】医療介護の営業マン
こんにちは、私は福祉用具専門相談員として営業をしております。高齢者の増加は著しく、需要に対して施設の供給が追い付かない状況です。

今回は最近増えている「有料老人ホーム」を例に、施設の開設に必要な手続きや流れをお伝えしていきます。

 

 

介護施設を開業・開設に必要な手続きや流れとは?

最近、特に開設が増えているのが有料老人ホームです。有料老人ホームとは、入居者数に関わらずに高齢者に対して以下のサービスを提供する施設を指します。

  • 食事の提供
  • 介護の提供
  • 洗濯掃除等の家事
  • 健康管理

また、有料老人ホームは「介護付有料老人ホーム」「住宅型有料老人ホーム」に大きく分かれます。

「サービス付き高齢者向け住宅」という形態も増えていますが、根拠法令の微妙な違いもあるため、ここでは割愛します。

 

 

「介護付有料老人ホーム」「住宅型有料老人ホーム」の違いとは?

  • 介護付有料老人ホーム「介護保険が適用されるサービスを提供する施設」【制度ビジネス】
  • 住宅型有料老人ホーム「介護保険が適用されないサービスを提供する施設」【営利ビジネス】

住宅型有料老人ホームの場合、介護サービス事業所ではありません。住宅型有料老人ホーム自体の主たる事業収入は「家賃収入や管理費用」といった、不動産的収入となります。

特別養護老人ホーム(※特養)や介護付老人保健施設(※老健)と異なり、公的な補助金もないため、参入障壁はそれほど高くないと思われがちです。しかし、それは大きな間違いです。

有料老人ホームの開設は、決して簡単ではありません。 

 

 

介護施設の開業・開設に必要なものとは?

①法人格

まず、介護事業を運営するには法人格を取得しなければなりません。個人事業者は開業すらできません。

近年では、別事業を営む法人が新規に介護事業を行うケース(不動産事業⇒介護事業、太陽光事業⇒介護事業)も増えています。

法人格であれば介護施設の開設は可能なのですが、サービスの性質上、介護事業の経験が全くない法人が有料老人ホーム事業を行う場合には、慎重な判断が必要です。

設置主体となる行政も、事業未経験の法人に対して開設許可に難色を示すケースもあります。法人新設の場合も、行政との審議を要する場合があります。

 ②事前の入念な事業計画策定

法人格の取得が完了したら、次の課題は開設予定地を所管する自治体の現状把握です。また、土地の手当てが必要です。

有料老人ホームの開設において、事業者が土地を所有するケースはほぼなく、(1)土地オーナーに建物を建ててもらい、(2)テナントとして入居するという、いわゆる「サブリース」の形態がほとんどです。

開設を検討するにあたり、高齢者福祉に理解がある土地オーナーを見つけるだけでなく、契約形態を十分詰めていかないと、後々トラブルになりますので十分な注意を要します。

③開業資金の準備

事業計画の策定と並行して、開業資金の調達が課題です。有料老人ホームの開設には莫大な資金がかかります。まず思い浮かぶのが以下の項目です。

  • 建物賃貸借にかかるイニシャル・コストや内装費
  • 備品や設備の用意(特殊浴槽や給湯設備、ベッド、OA機器など)

運転資金等も含め、億単位の資金を想定する必要があります。自己資金だけでなく、金融機関からの融資も必要となります。お金のかかり方が、在宅系サービスとは桁外れとなりますので、相応の覚悟が必要です。

④介護人材の確保【最大の難関】

土地と資金の用意に目処が立てば、次の課題は人材の確保です。

有料老人ホームを運営する事業者の中には、施設内外に訪問介護や通所介護事業所を設置して企業が多いですが、それも含めて有料老人ホームの運営には人員が必要になります。

適正に人員が配置できなければ、事業を行うことはできません。しかし、介護人材を確保するのは容易ではありません。「人員の確保」という最大の難関が待ち構えています。

採用手段や時期、コスト等、あらかじめ計画しておかないと、本当に痛い目に遭います。

 

 

介護施設を開業・開設するための流れとは?

①開設予定地の市区町村に相談する

介護施設の開業に当たっては、まず開設予定地の市区町村に相談しましょう。理由は、開設予定地に有料老人ホームの整備計画がなければ、開設することはできないからです。

介護施設の整備は、市区町村が策定する「介護保険事業計画」に基づいて行われます。介護保険事業計画は、3年ごとに行われる介護保険法改正の都度、見直されます。

「介護保険事業計画」には、地域の現状を鑑みて不足するサービスがあれば整備する、といった内容が含まれます。「高齢者の増加に対して受け入れ施設が不足しているので、特養をA地域に50床、グループホームをB地域に18床整備する」といった内容です。

有料老人ホームについても同様に、計画に則り整備数を計画します。このように、有料老人ホームの開設には一定の規制がかかっているということになります。

何度も繰り返しますが、有料老人ホーム事業の運営は決して簡単ではありません。

人生の終末期を過ごす方の中には、疾患を抱える方も多く、いつ容態が急変するかもわかりません。高齢者を受け入れるということには、大変な責任が伴うのです。

介護施設運営は長期的視野で行われる必要があります。「開設して数年でやめる」という安易で無責任な考えは許されないのです。地域住民の中には、高齢者施設の開設を歓迎しない人もいます。

中には「認知症の老人が徘徊されては困る」「救急車が頻繁に行き来するのは物騒だ」等々、言いがかりとしか思えないようなことで反対する人も多いのです。

ですので、有料老人ホームの開設にあたっては、長期的視野で行うという覚悟を持ち、地域社会との交流や近隣の住民の理解を得ながら進めることが不可欠です。

また、設置予定地についてどのような法令の規制があるのか等、介護保険事業計画上の調整も含め、地元市区町村の担当部局に十分確認を取りながら進める必要があるのです。

②開設予定地の都道府県に相談する

市区町村との事前相談を終えると、次に都道府県との協議に進みます。これを「事前協議」と言います。事前協議にあたっては、指針に対する適合性を審査します。

都道府県や政令市等では「有料老人ホーム設置運営指導指針」というものが示されています。建物の構造設備や運営面、手続き手順等について細かく規定されており、事業者はこの指針に基づいて開設し届出なくてはなりません。

都道府県や政令市等では、有料老人ホームとしての機能に支障が生じないように、事業者が趣旨及び内容を十分理解されているかを確認し、指導・助言を行っています。

審査は、有料老人ホーム設置運営指導指針の内容に合致しているか、だけに留まりません。

設置予定地が土砂災害のおそれのある箇所等か否か、当該地域を所管する土木事務所に確認が必要ですし、建築基準に合致しているかの確認も必要です。手続きが進んでいくと、消防確認も必要になります。

既存の建物に対して届け出を行う場合にも、注意を要します。建物用途が「共同住宅」や「寄宿舎」等である場合には、「有料老人ホーム」への用途の変更確認が必要です。これを怠ると法令違反となってしまいます。

 

 

有料老人ホーム設置届の提出

有料老人ホームの設置については、老人福祉法の規定に基づき、都道府県知事等あて「有料老人ホーム設置届」を提出します。

この届出の時期は、上記の地元市区町村・都道府県等に対する事前協議が終了し、建築確認後に速やかに提出することになります。これが提出されない事業者は、いわゆる「無届ホーム」という扱いになります。

有料老人ホーム設置届が提出されないままでいると、行政から届出の勧告を受けたり、悪質性が疑われる場合は事業者名の公表や立ち入り調査等、行政指導や行政処分がなされたりすることもありますので、ご注意ください。

④施工完了後、事業開始届の提出

有料老人ホームの施工工事が完了し、事業開始した場合は、速やかに都道府県県知事等あてに事業開始届を提出します。

以上、住宅型有料老人ホームの開業する流れや手続き関する注意点について、解説をいたしました。次回は「介護施設の開業に必要な資格とは?」について配信いたします。

 

 

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