今回は、【介護施設の開業に必要な資格】取得の手続きや流れをご紹介します。
今回は最近増えている「有料老人ホーム」を例に、開業に必要な資格や取得の手続きや流れをお伝えしていきます。
目次
介護施設の開業に資格は必要か?
まず、結論から申しますと、住宅型有料老人ホームを開設する上で必要となる資格は、特にありません。
【介護施設の開業・開設】必要な手続きや流れとは?で、都道府県ごとに「有料老人ホーム設置運営指導指針」というものがあることをお伝えしました。
その中に、住宅型有料老人ホームの職員配置に関する事項が定められております。地域により一部表現が異なる部分はあるものの、基本的には下記のように記載されております。
職員の配置については、入居者の数及び提供するサービス内容に応じ、 その呼称にかかわらず、「管理者」「生活相談員」「介護職員」「看護職員」「機能訓練指導員」「栄養士」「調理員」「事務員」を配置すること。
ポイントとなるのは「提供するサービス内容に応じ」という点です。
例えば、管理者のほかに生活相談員(常勤。入居者100名に対し1名以上配置)、介護職員(入居者3名に対し1名以上)、看護職員(入居者30名までは1名以上配置。31名以上は20名まで増えるごとに1名以上追加)等々、人員基準が厚生労働省令により細かく定められています。
しかし、住宅型有料老人ホームはそれ自体介護保険のサービスではありません。従って、介護保険制度上の基準の縛りはないわけです。
管理者には、資格要件は特にありません。介護サービス事業においても、一部のサービスを除き管理者の資格要件は定められていませんし、業務に支障がない限り兼務も可能です。
入居者やご家族からの相談等の業務を、管理者が対応する仕組みにすれば、生活相談員は特に配置しなくてもよいでしょう。
また、食事の提供について、外部の給食業者に委託する形態にすれば、施設として栄養士や調理員を配置する必要もありません。
介護や医療のサービスを外部事業者に依頼する(後述)のであれば、住宅型有料老人ホームとして介護職員や看護職員を配置する必要もありません。
従って、住宅型有料老人ホームには有資格者の配置が必須の要件ではない、ということです。
ただし、有料老人ホームの併設として、訪問介護事業や居宅介護支援事業、通所介護事業等を行う場合は別です。サービスごとに人員基準が細かく定められておりますので、当然それを遵守しなければなりません。
有料老人ホームと各サービス事業所を併設する場合の注意点
ここで留意すべき点は、住宅型有料老人ホームと各サービス事業所は、たとえ運営法人が同一であってもそれぞれ「外部の事業」として扱うという点です。
なぜなら、有料老人ホームと介護事業所では、根拠法令が異なるからです。有料老人ホームは「老人福祉法」上の位置づけとなるのに対し、介護サービス事業所は「介護保険法」の位置づけになります。
介護事業の管理者が担当すべき業務とは?
先程、住宅型有料老人ホームの管理者については、特に資格要件がない旨お伝えしました。では、介護事業において管理者がすべき仕事には、どのようなものがあるのでしょうか?
管理者の仕事は、一言で申し上げますと「施設の一元的管理」です。以下が仕事の一例です。
- 利用者管理
- 運営管理
- 安全管理
- 職員管理
- 収支管理
- 行政管理
1)利用者管理
利用者の状態(既往歴や現病歴など)と介護方針(ケアプラン)を理解し、法令上適切なサービスを提供できているか確認する。入居時・退去時には、利用者本人・ご家族との面談をおこなう。トラブルが発生した際にも、管理責任者として対応する。
2)職員管理
介護職員の面接や採用、教育、保有資格・能力に応じた人員配置をおこなう。面談やアンケートで現場の状況を把握し、問題が生じた際には、ケアプランや人員配置の見直しを実施する。
3)運営管理
施設の運営方針・サービスレベルを策定し、モニタリングをおこなう。遵守すべき法令等を把握し、行政関係者との適正な関係を保つように努める。外部に向けた広報活動や渉外活動も実施する。
4)安全管理
利用者や職員の安全や健康に留意し、事故がないような環境づくりを行う。設備等に危険箇所があれば整備し、関連業者等との折衝等を行う。
5)収支管理
保険請求や利用者への請求業務、各種経費の管理などをおこなう。収入となる介護報酬とホテルコスト(家賃や食費、共益費など)を計算し、人件費などの支出をコントロールする。
6)行政管理
消防計画の作成・提出、介護保険事業においては、変更届、加算届や計画書、事故報告等の作成や提出を行う。行政からの指示があれば、都度対応する。立ち入り検査や実地指導にも対応する。
このように、管理者としての業務は多岐にわたります。
他職種と役割分担をされているケースもありますが、管理者は上記業務を統括する責任を持つことになります。法人の規模によっては、経営者が自ら管理者として業務をしているというケースも、よく聞かれます。
ここで言えることは、管理者には介護事業に関する相応の造詣が必要である、ということです。介護職・看護職は「専門職」といわれています。
業界知識も全くなく、福祉に対して思い入れもない素人の管理者に、部下は尊敬の念を抱くでしょうか。これでは、有料老人ホームの管理者としてふさわしいとは言えません。
たとえ現場経験がなかったとしても、少なくとも介護職員初任者研修くらいは取得しておきたいものです。
住宅型有料老人ホームの中には、看護師の資格を持つ管理者も多く存在しています。医療の知識を持つ管理者であれば、現場も心強く感じるでしょう。
反面、あまりに現場寄りになりすぎてしまい、管理責任者としての責務が疎かになってはいけません。
管理者には、営業、総務、経理等の側面があります。これが疎かになると、組織を適切にマネジメントすることはできません。要は、バランスが大切であるということです。
介護施設の開業に便利な資格は?
繰り返しますが、介護サービス事業を行う場合には、サービスごとに定められた人員基準を満たさなければなりません。
住宅型有料老人ホーム以外に、ゆくゆく別のサービス事業を展開したいということであれば、開業時に有資格者を取り入れておくことも有効です。
例えば、訪問介護事業を行いたいのであれば、サービス提供責任者の配置が不可欠です。
訪問介護事業の場合、利用者40名までサービス提供責任者を1名以上配置しなければなりませんし、資格要件もあります。介護福祉士の配置は必須ではありませんが、できれば確保したいものです。
また、看護師の資格を持つ職員が複数人いれば、将来的に訪問看護ステーションの開設を視野に入れやすくなるでしょう。
訪問看護ステーションの場合、管理者は正看護師か保健師の有資格者が要件であり、かつ常勤換算2.5名以上の看護職員の配置が義務です。
看護師が何名かいれば、将来的に自社で訪問看護サービスを提供できるようになるかもしれません。
開業にあたっては、以後の展開までイメージができているか否かで、大きく変わってくることをご理解いただくとよいでしょう。
次回は「介護施設の開業に必要な資金(助成金)とは」について取り上げます。
大手の福祉用具メーカーに勤務する、入社10年目の男性営業マン。お客様からの評判は良いが、とにかく漢字が苦手。「嚥下」「拘縮」「褥瘡」がどうしても書けず、今年中に漢字検定2級の合格を目指している。漢字以上に人間関係が苦手で、「上司は二の次三の次」を地で行く、不器用で真面目なサラリーマン。