医療・介護の現場において、身体的負担となる介助のひとつが移乗介助。体格や体型の他、脳梗塞等の後遺症による麻痺や人工関節等による可動域の制限によっても移乗方法が異なります。よりよいケアのためには最適な移乗介助が不可欠ですが、介助者の身体的負担が軽減されなければケアの継続は成立しません。
今回は介助者の負担軽減となるノーリフティングケアについて一般社団法人全国ノーリフティング推進協会の取り組みをご紹介します。
一般社団法人全国ノーリフティング推進協会
<全国ノーリフティング推進協会ホームページより引用>
一般社団法人ノーリフティング推進協会は2014年に設立され、愛知県に事務局をおき運営されている法人です。介護職の身体的負担と精神的負担を軽減し、魅力ある仕事となるための諸問題を解決・改善することを目的としています。
ノーリフティングケアの考え方を主軸とし、ノーリフティングの普及・啓発と、よりよいケアの開発のための買う同を行なっています。
ノーリフティングケアとは
全国ノーリフティング推進協会が取り組むノーリフティングケアが誕生したのは、1998年のオーストラリア。身体疲労に伴う離職により深刻な看護師不足が広がったオーストラリアでは、看護連盟によるノーリフティングポリシーを提唱しました。
- 押す
- 引く
- 持ち上げる
- ねじる
- 運ぶ
上記を人力のみで行うのではなく、福祉用具を用いた手法を取ることによって身体的負担を軽減することを図りました。日本ノーリフト協会によると、ノーリフティングケアを導入した後のオーストラリアでは労災申請に伴う申請費用が1年間で46%減少。人力による移乗・移動による受傷は56%も減少したことが挙げられています。日本でも2013年に厚生労働省から「職場における腰痛予防対策指針」が示され、人力での抱え上げは原則行わせないことが示されています。
全国ノーリフティング推進協会の取り組み
<全国ノーリフティング推進協会ホームページより引用>
全国ノーリフティング推進協会では、ノーリフティングケアを推進するために大きく3つの活動を行なっています。それぞれの内容を項目ごとに紹介します。
全国大会
<全国ノーリフティング推進協会ホームページより引用>
年1回ノーリフティングケアに関する取り組みを発表し、研鑽と情報交換の場となる全国大会を開催しています。コロナウイルス感染対策のため2019年度から中止となっていましたが、3年ぶりとなる2022年大会が事務局のある愛知で行われ、基調講演・実践発表の他、新たに実演指導とデモンストレーションが加わりました。
次回以降の全国大会情報は、全国ノーリフティング推進協会ホームページをチェックしてみてください。
基礎研修
ノーリフティングケアの基本を、導入に至る社会的背景から学べる研修です。医療・介護における安全な介護方法に関する諸制度や、安全な介護動作・姿勢、福祉用具の正しい使い方などを学ぶことができます。
全国ノーリフティング推進協会のホームページから申込を行うことができます。
一般研修
一般研修は基礎研修を修了した方向けの研修です。2日間の実技研修を経て具体的な実践方法を学ぶことができます。グループワークを用いながらの研修となるため、他の研修生によい刺激を受けてモチベーションが上がるといった方も多いようです。
こちらも基礎研修同様、全国ノーリフティング推進協会ホームページより申込を行うことが可能です。
安全な方法で皆が安心な移乗を
いかがでしたでしょうか。全国ノーリフティング推進協会の取り組みは単なる移乗動作の獲得だけではなく、ノーリフティングケアを通して医療・介護の仕事を魅力的なものにすることが目的です。安全な方法を獲得することは負担を軽減するだけでなく、負担に隠れて見えにくかった本来の仕事の楽しさに気付くことができるでしょう。これから就職を目指す人も、いま働いている人も必見の取り組みです。
大手の人材会社に勤務する、入社6年目の女性営業マン。社内では『医療介護業界の情報通』として鳴らし、業界の主要人物とのパイプも持つ。ネットワークの拡大を目指して、フクロウ介護のライターとして今後さらなる活躍が期待されている。趣味は囲碁と将棋、最近は麻雀の勉強にも励む。