今回は、【介護施設の開業資金】調達方法4パターンをご紹介します。
今回は最近増えている「有料老人ホーム」を例に、開業に必要な資金調達や助成金情報をお伝えしていきます。
目次
【介護施設の開業資金】調達方法4パターンとは?
介護施設を開業する上で、非常に重要なのは「資金の調達」です。
開業する介護施設によって、開業に必要な費用は大きく異なります。今回は「住宅型有料老人ホーム」を中心に解説しますが、他の在宅サービスに比べて費用が膨大にかかるのは想像に難くありません。
今回は、住宅型有料老人ホームの開設に必要な費用について、そして資金の調達方法にはどのようなものがあるのかについて解説いたしますので、一緒に考えてみましょう。
【介護施設の開業・開設】必要な手続きや流れとは?もご参考にしてください。
介護施設の開業資金を調達する方法とは?
①自己資金
資金調達の最初の一歩は「自己資金」です。
開業を検討している人が皆、潤沢な自己資金を確保している人ばかりではありません。自己資金だけで施設を開設できる人は、ほぼいないと言っても過言ではありません。
だからといって、自己資金がゼロというのは感心できません。
一概には言えませんが、施設の開設を検討するならば、最低でも1,000万円前後の自己資金を確保することが必要です。自己資金額は、後述する「金融機関からの借り入れ」にも影響します。
②金融機関から借り入れ
自己資金ではまかないきれない場合は、「金融機関からの借り入れ」により資金を調達します。金融機関からの借り入れ方法として、下記が挙げられます。
- メインバンクからの融資
- 株式会社日本政策金融公庫からの融資
- 信用保証協会からの融資
- WAM(独立行政法人福祉医療機構)等の団体からの融資
メインバンクをお持ちの方は、まずはそちらにご相談ください。
日本政策金融公庫からの融資は「無担保、保証人なし」など条件が魅力的ですが、金利はやや高くなります。一方、信用保証協会からの融資は東京都などの自治体を通した融資となります。
自治体が融資の借り入れ条件を決定し、信用保証協会が保証を担ってくれ、金融機関によって融資が実行されます。
いずれの場合も、融資の前提条件として「自己資金」が必要です。これにより融資の審査に通るかどうか、融資額がどうなるかが決まるのです。
自己資金が多いほど、融資が実行されやすくなります。自己資金が0の場合は、融資が受けられる可能性は限りなく低くなります。
自己資金の大きさが事業に対する思いと資金の返済に対する信頼の証となるからです。お金を貸す側であれば、自己資金が全く準備できない人が、本当に事業経営できるのかと懐疑的になるのも当然です。
信用保証協会を通す場合、自治体によって自己資金の規定は異なります。
日本政策金融公庫や信用保証協会からの融資を受ける場合は、最寄りの商工会議所や商工会に相談されることをおすすめします。相談員さんが懇切丁寧にサポートしてくれます。
③助成金の活用
融資以外の資金調達として、助成金の活用があります。
助成金とは、国や公共団体から支給を受けることができる給付金です。
介護事業に関連する主な助成金は以下の通りです。
- 介護労働環境向上奨励金
- 介護福祉機器等助成金
- 特定求職者雇用開発助成金
- トライアル雇用奨励金
介護労働環境向上奨励金
介護労働者の負担を軽減し、賃金や労働条件の改善などを進めた介護サービス事業主に支給される助成金です。
介護福祉機器等助成金
事業主が新たに介護福祉機器を導入することによって、介護労働者の身体的負担が減り、適切な運用が行われた場合に支給される助成金です。支給額は、介護福祉機器の導入に要した費用の2分の1(上限300万円)です。
雇用管理制度等助成金
介護労働者の雇用管理に関する改善につながる制度を導入し、実施したことにより一定の効果が出た時に支給される助成金です。支給額は、制度の導入に要した費用の2分の1(上限100万円)です。
特定求職者雇用開発助成金
60~64歳の高年齢者や母子家庭の母親、障がい者など、就職が特に困難な人を継続的に労働者として雇用した場合に支給されます。
トライアル雇用奨励金
安定的な就職が難しい人や障がい者等就職が困難な求職者を一定期間(原則3カ月)試行雇用した場合に支給される助成金です。これ以外にも雇用関係に関してさまざまな助成金があるほか、各自治体の助成金もあります。
助成金を活用できれば、開業に必要な資金を補助してもらえますし、運営に必要な資金を調達することができます。
基本的には返済の必要がありませんが、助成金の内容によっては、かなりの量の申請書類を作成する必要があります。不備があれば受け付けてくれません。
また、助成金は基本的に事業遂行(賃金・労働条件の改善、該当する人材の採用等)の後に、実績報告をし、受理されてはじめて支給されるケースがほとんどです。要は「後払い」ということです。
言うまでもありません、不正受給は問題外です。返還を求められるだけでなく、以後助成金受給ができなくなるペナルティが課せられますので、楽観的に考えるのは危険です。
適正に取り扱いさえすれば、返済が不要である助成金は非常に有効な資金調達手法といえます。
助成金に関する情報はなかなか収集しにくく、予算の関係により、年度途中で終了となるものもあります。常に最新情報をキャッチするのは結構大変です。
助成金に詳しい社会保険労務士や中小企業診断士等の専門家や、前述の商工会議所・商工会等に相談してみましょう。
④ファクタリングの活用
売上を早く現金化したい時には、ファクタリングの活用を検討してみましょう。
ファクタリングとは、を売掛金となる介護給付費(国保連に請求した報酬額)を、期日前に一定の手数料を払って買い取ってもらうサービスです。資金調達とは少しニュアンスが異なりますが、資金繰りを改善する策ですので、実質資金調達と同義です。
手数料がかかるため、受け取れる額は全額ではありませんが、国保連からの入金があるまでの資金繰りの問題が解決できる可能性が高まります。また、ファクタリングは負債(借り入れ)ではありませんので、貸借対照表(銀行に対して)に影響を与えないというメリットもあります。
事業ドメインと事業計画の策定とは?
事業ドメインの策定
事業ドメインの策定とは、「数ある介護事業の中で、どの事業を選択し、経営資源を投入するか」を考えることです。
介護事業と一口に言っても、その種類は多岐にわたります。その中で、住宅型有料老人ホームの事業を行いたいと考えたとして、なぜその事業を行いたいのかを明確にしなければなりません。
有料老人ホームは、高齢者の生活の場です。それを支えることは大変尊いですが、同時に困難も伴います。
施設の運営はお金のかかり方が尋常ではありません。状況によりますが、億単位の資金準備を想定する必要があります。
施設経営には長期的ビジョンが求められ、苦しいからといって簡単にやめることはできません。安易に参入すると大やけどすることもあります。相応の覚悟が必要です。
最初から高いリスクを負わず、比較的に安価で開業したいということであれば、「居宅介護支援事業所(ケアマネジャー)」や「訪問介護事業所(ヘルパー)」等から始めることをおすすめします。
居宅介護支援事業は、管理者(主任介護支援専門員の有資格者)が最低1名いれば始められます。
訪問介護事業は、一定の人員を確保する必要性から、居宅介護支援事業に比べて開業費用はかかりますが、それでも施設運営に比べれば費用は安く抑えられます。
とはいえ、費用が比較的安価だから「簡単」ということではありません。
詳しくは後述しますが、介護事業を経験している法人のほうが、未経験の法人に比べて融資が圧倒的に受けやすくなります。
熟慮に熟慮を重ね、それでも住宅型有料老人ホーム経営を行うという考えが固まりましたら、事業計画を立ててみましょう。
事業計画の策定
金融機関からの融資を検討するのであれば、事業計画書の提出は必須ですので、やはり綿密な作成が必要です。
「経営理念」「事業規模」「人員計画」「サービス方針」「準備すべき設備」等をしっかり立案した上で、資金計画を立てなければなりません。
何が必要で、どこにいくらかかるのか、ということを把握せずに進めても、うまくいくはずがありません。以下、資金調達の例についてご紹介いたします。
次回は「介護施設の経営は儲かるのか?」というテーマを取り上げます。
大手の福祉用具メーカーに勤務する、入社10年目の男性営業マン。お客様からの評判は良いが、とにかく漢字が苦手。「嚥下」「拘縮」「褥瘡」がどうしても書けず、今年中に漢字検定2級の合格を目指している。漢字以上に人間関係が苦手で、「上司は二の次三の次」を地で行く、不器用で真面目なサラリーマン。