福祉用具選びの失敗例とは
施設に必要な福祉用具を購入されたものの、様々な理由からお蔵入りになってしまった物もあるかと思います。そこで、施設管理者の方に「福祉用具選びの失敗例」をアンケートで聞いてみました。
【福祉用具選びの失敗例】
私自身が購入しましたが使い方が難しいという事で従業員がまったく使い慣れてくれません。確かに難しくはありますが慣れればとても使いやすい商品です。人に聞くなどの配慮ができればもっと良いです。福祉用具は難しく作られていると思います。(施設長/1年以上5年未満)
現場の役職者の意見で購入したものが、現場の職員からは不評だった。 介護施設に営業に来る業者は限られた業者が多く、価格の比較ができず高く購入していた。(施設長/1年以上5年未満)
いかがでしょうか、どこか身に覚えのある事例ではないでしょうか。では、どうすればこのような結果にならずに済んだのかを考えてみます。
欲しい機能をすべて洗い出す
まずは、福祉用具に欲しい機能をきちんと洗い出すことが大切です。「何となく介護浴槽を入れ替えたい」「便利な介護リフトが欲しい」など、曖昧な理由では(ほぼ90%の確率で)後悔する結果となります。
私がおすすめしているのは「なぜなぜ分析」と呼ばれているテクニックです。これはトヨタ自動車が生産ラインで発生する問題を解決するために用いる分析手法です。
「なぜなぜ分析」のネーミングセンスの是非はともかく、試しに一緒にやってみましょう。最近、介護施設でトレンドになっているインカムをテーマに考えます。
【なぜなぜ分析】
[質問①]なぜインカムを導入するのか?
[回答①]人手不足で現場が回らないから。
[質問②]回答①になるのは、なぜですか?
[回答②]せっかく採用しても、すぐに辞められるから。
[質問③]回答②になるのは、なぜですか?
[回答③]新人とコミュニケーションの時間が取れないから。
以上の考察を通して、インカムを導入する目的は「新人とのコミュニケーションする時間を増やして、辞めさせない環境を作ることで、人手不足を解決するため」と打ち出すことができました。
このように問題の原因を「なぜ?なぜ?」と深堀りすることで、福祉用具が必要な理由を浮かび上がらせることが可能になります。
この部分を施設管理者と現場スタッフできちんと共有できれば、「●●万円も出して購入した福祉用具が、今や倉庫でお蔵入り・・」という悲しい事態は起こらないでしょう。
施設管理者と現場スタッフで問題を共有
次に、施設管理者と現場スタッフで現状の問題を共有する必要があります。この部分が共有されていないと、お互いに「アイツは話のわからないやつだ」と嫌悪感ばかりが残ってしまいます。
以前、私が特養の施設長(Aさん)から聞いた話では、「現場スタッフが欲しいからと買った介護ソフトなのに、すぐに使わなくなってしまった。2度と言うことを聞いてやるまい!」とお怒りでした。
仕事しない、陰口ばかり言いまくるベテラン職員ってなんでクビにさせないのだろうか?そいつ達クビにしたら確実に良くなると思うよ。そいつ達のせいで辞めた若い職員何人もいるよ。施設長に相談したら、
「バカだからしょうがない」で終わり。いや、施設長「お前もバカだよ!!」
— うみがめ (@umigameeee8) June 26, 2019
施設長のお気持ちもわからなくはないですが、スタッフの意欲を汲むことも施設運営には大切な要素です。ここでは、また別の施設長(Bさん)が実践されている事例をご紹介します。
その方は、以下に記載したアンケートを定期的に全スタッフに配布(無記名)して、現場の問題を把握することに努めておられます。
【働く環境の改善アンケート】
皆さんが働く環境をさらに良いものとするため、それぞれが抱えているであろう問題を洗いざらい書き出してください。
- 施設として問題と思われることは何ですか?
- 現場として問題と思われることは何ですか?
- 利用者として問題と思われることは何ですか?
次に、どんな環境であれば皆さんにより良く働くことができるか、できるだけ具体的に書き出してください。
- どんな施設であってもらいたいか?
- どんな現場であってもらいたいか?
- どんな利用者であってもらいたいか?
以上のアンケート結果を参考に、施設管理者と現場責任者とで共有しておられるそうです。もちろん、すべての意見を聞くことはできませんが、退職問題で事前の対応が楽になるとおっしゃっておられました。
また、現場に意見を発信させることで「自分たちが欲しい福祉用具があるなら、きちんと施設管理者に納得させなさい」と明確なスタンスを打ち出すことができました。
こう言われた現場はやる気になり、欲しい機能を満たす福祉用具を自ら調べるようになり、別の事業所へ体験に出かけたりと、「実際の使用感や導入後の流れまで考える癖がついた」とB施設長は喜んでおられました。
ここまで施設管理者と現場が一体になって準備が進めば、残された課題は「どの業者から買うか」だけと言えます。
業者選び=結婚相手選び
さて、「福祉用具が必要な理由と欲しい機能」「現場の意欲と計画性」が揃ったら、後は「どの業者から買うか」を決める必要があります。もしかしたら、この部分が介護施設が抱える最大の問題(情報収集力)かもしれません。
(私の印象では)施設管理者の方は内部事情には詳しい一方で、メーカー販売店などの外部情報を集める力が弱いと感じます。情報を持ってくる相手が限定されてしまうと、洗脳されていることにも気が付きません。
【メーカーや販売店選びの失敗例】
ベッドをメーカーの営業マンから勧められて購入したものの、リモコンの反応が悪く動かすたびに時間がかかる。手間取っている間の無駄な時間が、スタッフと利用者の負担になっている。スタッフからも苦情が入っているため、買い替えも検討している。(施設長/1年未満)
歩行器と車椅子が古くなったので全て入れ替えるために、職員が付きあいのあった業者に依頼をしました。しかし正直最悪です。料金の割引も融通はきかないし、納品も遅れたり、応対の態度も馴れ馴れしかったり、電話をしてもなかなか繋がらなかったりで。今後その業者とは付き合いは絶対にしません。(施設長/1年以上5年未満)
メーカーや販売店に”騙されて”後悔している施設長の怒りが見えます。その気持ちはわからなくはないですが、十分に情報を集めずに業者を決定してしまった施設長にも責任の一端があるのではないでしょうか。
つまり、「あの業者はダメだから別の業者にしよう」を繰り返すだけでは、また同じ結果になる可能性が高いです。業者とは往々にしてそういう物だと考える方が良いかもしれません。
では、業者選びに失敗しないコツをお伝えします。業者を結婚相手と読み替えると、親近感が湧いて考えやすいでしょう。
【メーカーや販売店選びのコツ】
- 施設側の事情や背景を積極的に知ろうとしているか?
- おすすめする福祉用具の短所もきちんと話しているか?
- 導入後のアフターフォローはどうなっているか?
できれば、「他の事業所を見学させて欲しい」旨を伝えて、快く引き受けてくれる担当者であれば信頼できると考えて良いでしょう。
福祉用具は高い買い物ですので、「安くて良いものを導入したい」とお考えになるのは当然ですが、それでは業者に足元を掬われてしまいます。これが安物買いの銭失いの根源なのです。
【価格重視で買い物した失敗例】
ネットショッピングでの購入の方が安いが、アフターフォローが必要なため高い金額で業者から買わなくてはいけなかった。機械浴槽を入れ替えたら、頻繁に故障がおこり現場からブーイングがひどかった 。見積りを依頼してもなかなか出て来ないことや、アフターフォローが悪い業者が多い。(施設長/1年未満)
経営難だったので、インターネットで調べて価格が一番低いものを購入したのですが、いざ届いてみると思っていたような作りではなく、機能性がとても低いベットが届いてしまいました。もう少し、慎重に検討すればよかったなと思いました。(施設長/1年未満)
ここから一歩考えを深めて、「少し高くても、しっかりフォローしてくれる業者を選ぼう」となる方が、コストパフォーマンスとして賢い買い物と言えるでしょう。
繰り返しになりますが、業者選びとは結婚相手選びです。つまらない営業トークに惑わされず、ご自身が信頼できると思える業者と添い遂げられることをお祈りします。